うなぎを美味しく食べる基礎知識
うなぎの食べ方について

うなぎの旬はいつ?

土用丑の日にうなぎを食べる習慣が根付いているので、うなぎの旬は夏だと思われています。確かに滋養豊富なうなぎは夏バテを防ぐのにぴったりで、夏になると食べたくなるのは間違いありません。実際、日本のうなぎの大半を占める養殖の鰻は土用丑の日に合わせて育てられるところがあるので、今ではうなぎの旬は夏と言っても良いでしょう。

ただ、この習慣は江戸時代にうなぎ屋さんのキャッチコピーとして「本日土用丑の日につき」と書かれたのが始まりということで、必ずしも旬を示すものではありません。ちなみにこのコピーを思いついたのは発明家・平賀源内というのが一般的ですが、天明の文人・大田南畝など、諸説あるようです。

江戸時代の歳時記には晩秋に多くの人がうなぎを食べるという記載があります。鰻が冬眠に備えて栄養を蓄える11月に食べるというのは理にかなったことだと思われます。

調べてみると、うなぎにはビタミンB1やビタミンA1が多く含まれ、夏バテ解消効果があるのは間違いありません。視力回復にも効果があると言われます。ビタミンB1はうなぎの可食部100g当たり0.75mg含まれています。ビタミンA1は100g当たり4,700IU(IU:国際単位)も含まれていて、これは卵の10倍、チーズの5倍にあたります。肝臓には特に多くのビタミンAが含まれ、うなぎのきも(肝臓)約10gで成人1日のビタミンA所要量に達するとされています。

鰻の血には毒がある?

ところで、うなぎと言うと蒲焼が中心で、生で食べることがないのを不思議に思いませんか?

浜名湖の方ではうなぎの刺身を出すお店もあるようですが、ほとんど生では食べられないのは、鰻の血に神経毒「イクチオヘモトキシン」が含まれているからです。間違って食べると、ひどいときには呼吸困難を引き起こします。調理にも注意をしないと皮膚に悪影響が出ることがあると言われています。

ではお店で出されているうなぎの刺身は大丈夫なの?と思いますが、これはプロの調理人さんがとんでもない時間をかけて徹底的に血抜きをしてくれるので初めて可能になるのだとか。この毒は60度以上で加熱すると消えるので、加熱調理するのが基本なのですね。皆さんも「うなぎをさばくところからやってみたい!」と思われたときにはご注意ください。

世界のうなぎ料理

二ホンウナギとヨーロッパウナギなどの違いはありますが、中国やドイツなど多くの国でうなぎは食べられています。

中国では生姜などの薬味を使ってよく蒸したものが好まれます。他にも油で揚げたり、炒めたり、さすがに中国ではさまざまな料理法が用いられているようです。

ドイツやオランダでは燻製にして食べることがあるようです。また、スペインではニンニクを入れた油で煮て、アヒージョにして食べる習慣が。それぞれのお国柄が出ているようで興味深いですね。

今では日本食がさまざまな国に広まっているので、日本食として初めてうなぎを食べたという国も。寿司ロールにうなぎが巻かれていることもあります。

改めて蒲焼という食べ方は日本独特の文化なのだと感じられます。蒲焼にして食べたという記録は鎌倉時代にはすでに残されています。今のように開いて焼くのではなく、ぶつ切りにして串にさして焼いたようです。その形がガマ(蒲)の穂先に似ているからガマ焼きと言うようになったという説もあります。

背開きか腹開きか

うなぎを開くのは江戸期になってからのようですが、関東では背開き、関西では腹開きにするという違いがあると言われます。武士の街・江戸では切腹に通じる腹開きは避けられたという説もありますが、他の魚では腹開きでさばくので本当かどうかは分からないということになります。

一説には肋骨のない鰻は背開きの方が簡単で、調理の技では歴史の長い関西に追い付いていなかった江戸では背開きがやりやすかったのだとも言います。

関東と関西の違いでは、関東はうなぎを蒸すのに対して関西はあまり蒸さないと言われることがあります。蒸してやると皮が柔らかく美味しくなるのです。関西では焼きの技術が高いから蒸さないという人もありますが、関西でも温かいご飯に入れ結果的に蒸して提供する「まむし」といううなぎご飯の伝統があります。ご飯の間で蒸すところから「間蒸し」と呼ばれたのだそう。

うなぎと人のさまざまな関わりを知って食べれば、さらに深く味わうことができるのではないでしょうか。